最終更新日:

令和3年 国の蓄電池補助金 VPP実証実験に変わるDERってなに?

補助金の背景

蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業の概要

※ 経産省概算要求から抜粋

昨年までのVPP※1. 関連の補助金が、名前を変えてやってきました。
その名も、蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金

実証事業の内容は、以下の3種類に分かれています。

  • 1.ダイナミックプライシングによる電動車の充電シフト実証事業 (通称:DP補助金)
  • また、再生可能エネルギー発電等のアグリゲーション技術実証事業のうち、
    • 2.再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業
    • 3.分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業 (通称:DER補助金)

一般の方が参加できるのは、①のDP補助金と③のDER※2. 補助金です。
いずれも、蓄電池やV2Hを導入するというだけでは補助金の申請をすることはできません。
VPPの実証実験の計画に参加するという条件で、機器を導入するための助成が受けられます。

※1. VPP(Virtual Power Plant)=仮想発電所 
たくさんの工場や家庭などにある分散されている太陽光や蓄電池などのエネルギーリソースを、高度なエネルギーマネジメント技術により束ね、遠隔・統合制御することで、 電力の需給バランス調整を行い「あたかも1つの大きな発電所(仮想発電所)のように機能させる仕組み」のこと
※2. DER(Distributed Energy Resources)=分散型エネルギー源

仮想発電所(VPP)のイメージ

ここでは、「分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業 (通称:DER補助金)」について解説していきます!

日本はFIT制度からの自立をするために、住宅用や産業用の太陽光FIT価格を年々引き下げ、「2025年に運転開始する平均的な案件で売電価格が卸電力市場価格並み」を目指すことが明確化されました。
このため、住宅用太陽光発電のFIT価格は目下、10.3円/kWhを目指して進められるものと考えられます。

なお、FIT※3. 制度では、調達価格等が決定される認定時から、運転開始までの期間として、最大で1年間を運転開始期限として定めています。
そのため、2025年ではなく、2024年には10.3円/kWhのFIT価格になると想定されます。
この実証実験はこのFITに変わるFIP※4. を進めるための最終段階の実証実験になるといわれています。

※3. FIT(Feed In Terriff)=固定価格買取制度
※4. FIP(Feed In Premium)=変動する市場価格にプレミアム(補助額)を上乗せして買い取る制度

DER(VPP)実証事業について

DER実証事業は、平成28年度より経済産業省主導の施策として始まり、令和2年度までの5年間をVPP実証事業として進めてきました。
蓄電池の最適な制御を行い、VPPが実現すると、太陽光をはじめとする再生可能エネルギーの大量導入、電気を安定的に供給するための系統安定化、コスト低減をすることができます。

そのVPP構築の実現に向けた最終実証として、令和3年度から3年間実施されるのがDER実証事業となります。
(参考)経済産業省 資源エネルギー庁HP

DER補助金概要

DER補助金は、A事業、B事業、C事業に分かれており、それぞれが決められた専門的な事業を行い、それぞれを組み合わせて一つの実験を行うスキームとなっています。
蓄電池を導入して、みなさんが計画に参加できる事業は、C事業にあたります。
C事業で補助金を獲得するための申請は、各個人で申請をすることはできず、B事業者の中の、リソースアグリゲーターと呼ばれる会社を通して、補助金の申請をしてもらう形式になります。

リソースアグリゲーターはコンソーシアムリーダーを含めて19社ありますが、各社によって実証実験の計画が異なるため、使用するリソース(蓄電池)やエリアが限定されていたり、一般のC事業者の参加を想定していなかったり(申請を受けられない)、非常に複雑です。
そのため、販売店が間に入ってサポートする事が、管理するSii(一般社団法人 環境共創イニシアチブ)からも推奨されています。

DER補助金は、A~C事業の3種類に分かれています。個人が参加できるのはC事業ですが、直接申請は出来ない決まりなので、B事業のリソースアグリゲーターを通して申請を行います。

エネタウン.jpは、リソースアグリゲーター19社すべてに連絡を取り、交渉を行いました。
その結果、7社のアグリゲーターと家庭用蓄電池を設置することによる、C事業の補助金申請受け入れを獲得しました。

自分のエリアが補助金を適用可能か問い合わせる

実証実験の内容

実証実験では、1年のうち計画により決められた期間、リソースアグリゲーターが遠隔操作によって、お客様の蓄電池の制御を行います。
実証実験に参加する同意書などの書類関係を除いて、実際の実験でお客様に動いていただくことはありません。

1つの会社の例ですが、昨年の実証では1週間程度の実験期間で、多い方で10回の外部制御をしたとの事です。
参加いただくアグリゲーターの計画により異なりますので、契約前に内容をご確認ください。

蓄電池の制御内容には、下記の2点があります。

太陽光発電により、発電した電気を蓄電池に貯める制御 (市場に電力が余っており、系統に流しても余ってしまう場合などを想定)
電力会社から電気を買わず、蓄電池に溜めた電気を使う制御 (市場の電力が足りず、供給が追い付かない場合などを想定)

発電量と需要の関係グラフ
市場の電気の需要線と余った電気のイメージ

実証実験に参加する条件

設備条件

C事業者として、この実証実験に参加するため必要な設備条件には、以下の3つがあります。

太陽光発電システムがついている事
遠隔制御可能な蓄電池を保有している事 (新たに導入するための補助金が得られます)
蓄電池を遠隔制御するためのHEMSを有する事 (新たに導入するための補助金が得られます)

保有存続条件

これらの外部制御のデータはHEMSを通して収集され、B事業者によって、今回の実証実験結果として報告されます。
少なくとも1年間実証事業に参加する必要があり、3年間を通して参加いただく協力を求めています。
また、補助を受けた機器は6年間処分(譲渡)することはできません。

この補助金のための制御により、人によっては、売電したいタイミングで、売電できない等の損失がある可能性はありますが、得られる補助金の額と比べると微々たるものだという事は容易に想像できます。
実際のリソースアグリゲーターから聞いた話だと、過去の実績では、一番多い損失金額でも5千円程度だったとの事です。

販売金額条件

お客様にとっては嬉しい、補助金条件として購入金額の上限が設定されています。

蓄電池+工事費: 16.5万円(税抜)/kWh×SIIに登録されている蓄電池の蓄電容量 
※ ハイブリッドの場合、PCS定格出力×2万円控除

HEMS: 工事費込み上限25万円(税抜)

補助金額

蓄電池+工事費蓄電池の初期実行容量(kWh) × 4万円
HEMS購入金額の1/2 (上限10万円)

蓄電池の補助金上限額は、個人申請の場合は、最大約66万円です。
家庭用設備の補助率及び補助上限額
設備区分 費用区分 補助率 補助金上限額
家庭用 蓄電システム 設備費
工事費
1/3以内 4万円/kWh
初期実効容量
蓄電システム
(TPOモデル)
5.5万円/kWh
初期実効容量
V2H充放電設備 設備費 1/2以内 75万円/台
工事費 定額 40万円/台
家庭用燃料電池
(エネファーム)
設備費
工事費
5万円/台
IOT関連機器
(EMS機器含む)
1/2以内 10万円
工事費について
区分 内容 備考
工事費
据付費
補助事業の設備の導入の工事に要する必要最低限の工事費・据付費
(家庭用、業務用・産業用共通)
・機械装置、電気制御装置及びこれらに附帯する設備設置に要する費用。
・基礎工事については、必要最低限の工事のみを補助対象とする。
・補助対象外の設備の導入に係る経費は補助対象とし、補助対象経費の切り分けを行うこと。

 業務用・産業用の蓄電システムの目標価格算定のための工事費・据付費について

DER等導入事業で導入する、家庭用及び業務用・産業用蓄電システムの目標価格に含まれる工事費・据付費については、以下の項目とする。

・基礎工事
・搬入費(但し、クレーンなどの重機費用を除く)
・据付費
・電気工事費
・試運転調整費
・現場管理費
・屋外設置用コンテナ/シェルターの設置に要する工事(基礎工事、搬入費、据付工事)

 支払い方法の条件

現金支払いは、振込のみが可能です。
また、ローンでの支払いの場合は、事前に相談しなければ、補助金の対象外にされてしまうことがありますので、ご注意ください。

クレジットカードでの支払いは対象外となります。

実証実験の登録が確認取れている対象機器

メーカー 対象機器型番
長州産業 CB-FLB01A
CB-FLB02A
CB-HYB04A
CB-H55T07A1
CB-H55T14A1
CB-H99T07A1
CB-H99T14A1
CBーP98M05A
CBーP98MS05A
CBーP164M05A
CBーP164MS05A
伊藤忠商事 LL3098HOS/X
LL3098HOS/Y
LL5130HOS/5・6
ニチコン ESS-U4X1
ESS-U4M1
ESSーU3S1
ESS-U2M1
ESS-H21L1
ESS-U2X1
オムロン 都度確認
京セラ
長州産業 Smart e-STORAGE
長州産業
Smart e-STORAGE
長州産業 Smart PV Plus
長州産業
Smart PV Plus
長州産業 Smart PV Multi
長州産業
Smart PV Multi
伊藤忠商事 SmartStar L
伊藤忠商事
SmartStar L
ニチコン 4kWh~16.6kWh
ニチコン
4kWh~16.6kWh
エヌエフ回路設計ブロック スマートスター3
エヌエフ回路設計ブロック
スマートスター3
オムロン フレキシブル蓄電システム
オムロン
フレキシブル蓄電システム
京セラ エネレッツァ 各容量
京セラ
エネレッツァ 各容量

対象エリア

沖縄、離島を除く、全国で申請いただけます。
但し、前出にありましたように、申請できる機器が限られています。
その他、九州電力管区や北陸電力管区では一部他の蓄電池を受けることができそうですが、都度ご相談ということになっています。 自分のエリアが補助金を適用可能か問い合わせる

申請期間

アグリゲーターが計画している実証実験期間までに、電力会社の連系確認が間に合わず、実験に一度も参加できないと、補助金の条件を満たさなくなるため、返金を求められる可能性があります。
そのため、実証実験が始まる期限までに蓄電池が電力連系され、外部からの遠隔制御ができる状態にできるかのスケジュール確認が必要です。

各リソースアグリゲーターにより、実験期間は異なりますが、早いところで10月ごろから始まり、遅くとも1月ごろが最終となっています。
連系の確認を取ったり、変更申請の日数を考えると、9月上旬ごろまでに蓄電池の工事がされていることが望ましいです。

実証実験のスケジュールイメージ

おわりに

エネタウン.jpでは、蓄電池やV2Hに係ることから日常のお役立ち情報まで、都度コラムや動画を更新しておりますので、ぜひ、定期的にチェックしに来てください!
もっと、蓄電池の補助金について聞きたい場合や、どの蓄電池を選んだらいいのかわからないという方でもお気軽にお問い合わせください。

お相手は岸上朋子でした。

令和3年度の国の蓄電池補助金「DER」ってなに?